
EM選考プロセスを公開します 〜面接で何を見ているか、なぜそう設計したか〜
面接で何を聞かれるのか分からないまま選考に進むのは、けっこうしんどい。自分が転職活動をしていた頃にそう思っていたので、ROXXのEM選考は質問の中身まで含めて公開することにしました。
こんにちは、ROXXでEM(エンジニアリングマネージャー)を務めている窪内です。
先月、「1チームのEMをやめて、"横断EM"を設計している話」という記事を書きました。
その前には、CTOの松本がFDE(Forward Deployed Engineering。自社で実証したAIの仕組みを顧客の現場に実装していく事業です)について書いています。
どちらの記事も、最後は「一緒に設計してくれるEMを探しています」で終わっていました。じゃあ、その選考で何を見ているのか。今回はその話です。
社内では「質問を公開したら対策されるのでは」という声もありました。それでも出すことにしたのは、EMやVPoEクラスの人にとって、選考の設計自体がその会社の組織観のサンプルになると思ったからです。私が転職先を決めたときも、面接の内容から「この会社は組織をこう考えているんだな」を読み取っていた気がします。
前の2記事では「設計の途中」「正解がない」ばかり書いていたので、今回は先に決まっていることから並べます。
1. 決まっていること(役割の箱)
募集しているのは、特定のチーム専任ではない横断EMです。前回は思想寄りの話だったので、ここは条件を淡々と書きます。
- レポートライン: CTO直下です
- 担当範囲: FDE(外販)スクワッドを中心に、複数スクワッドを横断します。着任時は1〜2スクワッドから始めて、段々広げていく想定です。いきなり全部見てください、ではありません(参考までに、いま私が見ているのは2スクワッド・8名です)
- 既存EMとの関係: 私や他のEMと並列です。上下はありません。誰がどこを見るかは入社後に相談して決めます
- 評価: 担当メンバーの一次評価者として関わります。1on1はするけれど評価は別、という切り分けはしていません
- 組織設計の権限: スクワッドの編成変更や新設は、CTOと合意すれば提案して実行できます。採用計画にも関わってもらいます
- 顧客折衝: FDEが中心になるので、商談同席や顧客とのすり合わせも業務に入ります
- 報酬レンジ: JDに書いてあります。面談でも率直に話します
前回「白紙の裁量」と書きましたが、あれは「権限がない」の言い換えではありません。ここまでは決めた上で、その権限をどう使って横の仕組みを組むかが決まっていない、という話です。

2. 選考フロー
基本は5ステップです。ただ固定の型ではなくて、話してみて確認できたこと次第で面接回数は増えたり減ったりします。 もう一人会っておいたほうがいいと判断することもあれば、早めに最終へ進めることもあります。変える場合は理由も含めて先にお伝えします。
- 書類選考(CTO松本・窪内)
- カジュアル面談(CTO松本/60分/オンライン)動機と期待値のすり合わせ。それと、正直に言うとアトラクトの時間でもあります。ROXXの実像を知ってもらいたいので、質問の時間もとります
- 一次面接(窪内・松本、場合によってはEM坂本も同席/60分/オンライン)ピープルマネジメント、組織設計、カルチャーフィットを見ます。この記事の本題である構造化面接はここでやります
- 最終面接(代表 中嶋/60分/オンライン)外販を任せられるかと、ここまでの各観点の最終チェック
- オファー面談(松本・窪内/60分/オンライン)条件の提示と、入社後の期待値、最初の90日の話をします
希望があれば、一緒に働くメンバー1〜2名と話す場も設定します(30〜60分/オンライン)。この役割はメンバーとの信頼関係が土台なので、こちらから提案することもあります。
本ポジションはフルリモート可なので、選考もすべてオンラインで完結できます。オフィスを見てみたいという方には、もちろんオフラインでも対応します。
いくつか、先に書いておきたいことがあります。
2の「カジュアル面談」について、ひとつだけ。お互いにすり合わせを行った結果、「期待する役割が違う」「今進むタイミングではない」と分かれば、ここで終了とすることもあります。それはこちらからお伝えすることもあれば、候補者の方から辞退されることもあります。ここを曖昧にしたまま透明性の話をするのも変なので、率直に書かせていただきました。
リードタイムは、書類提出から最終面接まで原則3週間以内(日程のご回答をお待ちしている期間は除きます)。EM層の転職活動は他社と並行しているのが普通だと思うので、超えそうなときは理由と見込みを先に連絡します。
お見送りになった場合、一次面接以降なら「どの柱のどこが噛み合わなかったか」をお伝えします。エージェント経由の方はエージェント経由で、直接応募の方には直接お伝えします。

3. 面接で見ている2つの柱
一次面接の質問は、ひとつの方針で組んでいます。
姿勢は自己申告で判断しない。過去にやったことで見る。
「メンバー育成が得意です」と言われても、面接の場で本当かどうかは確かめられません。なのでSTAR型(状況・課題・行動・結果)で「直近だといつですか」「どこまで自分の手でやりましたか」と聞いていきます。
以下は代表的な質問です。これで全部ではなく、答えに応じて掘っていきます。2本の柱はJDの必須スキルと同じ区分なので、読み比べてもらうと分かりやすいと思います。
柱1:問いを立てて人を伸ばす(メンバーケア・育成・組織運営)
まずは人に向き合う側。答えを与えるのでなく、問いを立ててメンバー自身に決めてもらった経験があるかを聞いています。
- メンバーが間違った方向に進みそうなとき、どうしましたか。答えを言いましたか、問いを返しましたか。その判断の理由も聞かせてください
- 1on1で、メンバー自身が答えに辿り着いた場面はありますか。どんな問いを立てましたか
- ジュニアや新卒を独り立ちまで育てた経験はありますか。「育った」と判断したのは、何を見てですか
- 負荷の高いマネージャーやリーダーから、組織運営を引き取って回した経験はありますか。最初の30日で何をして、何を捨てましたか
この柱で、いちばん重く見ているのは「構造をつくったか」です。 この役割の本題は、前回書いたサイロ化とマネジメントの空白という構造の問題だからです。人に向き合うことと同じくらい、向き合い方自体を仕組みにできるかを聞いています。
- チーム編成や組織構造を、自分の判断で変えたことはありますか。何を足して、何をやめましたか
- 権限のない相手(他チームのリード、他部門)に意思決定を変えてもらった場面はありますか。何を使って動かしましたか
- 個人の生産性が上がったことで、組織が壊れた、あるいは壊れそうになった経験はありますか。そのとき何をしましたか
- チーム間で重複していた仕組みや知見を、共通化した経験はありますか
3つ目は、前回の記事で自分が書いた「AI駆動開発はサイロ化を加速させる」を、そのまま候補者にも聞いている質問です。自分で書いたことは選考でも聞く、というだけの話です。
JDには「複数のチームやプロジェクトを横断した経験」と書いてありますが、これは「横断の肩書きがあったか」を見ているわけではありません。自分のチームの外に手を伸ばして何かを成立させたことがあるか、という意味です。隣のチームと重複していた仕組みを統合した、チーム内の責務の線を引き直した、といった経験もここに入ります。私自身、1チームのEMをやめる判断をしたのは1チームのEMだった時なので。
柱2:実務に染み出し、背中で示す(技術・顧客折衝)
- 直近で、自分の専門外の領域に踏み込んで理解を広げたことはありますか。なぜ踏み込んで、どこまで自力でやりましたか
- 初見のコードベースの挙動を把握しにいったとき、実際に何をしましたか。AIはどの工程で使いましたか。AIの出力が間違っていると、どこで気づきましたか
- AIが生成したコードの品質担保を、チームとしてどう組みましたか(レビュー、テスト、CIなど)
- 技術的負債やアーキテクチャへの投資を、事業側に通した経験はありますか
- 顧客との折衝(商談同席、提案、要件のすり合わせ)を自分で手を動かしてやった経験はありますか。それをメンバーの前でやって見せたことはありますか
最後の顧客折衝は、JDでも必須に入れている項目です。FDEの現場では避けられないので、ここは重めに聞きます。「経験がある」と「背中を見せて人が動いた」は別の話なので、後者を聞きます。
なお、コーディングテストや事前課題はありません。 技術の話もすでにやったことを聞く形で進めるので、準備は不要です。
ROXXのEMには、AIも含めて手段を自分で組んで、人任せにせず把握しにいってほしいと思っています。ただ、着任時点の技術の幅そのものを測っているわけではありません。見ているのは越境した事実と、学び直せるかどうかです。
補足を3つ。
- JDには「AIを駆使してでも自力で把握しに行く姿勢」と書いてありますが、意図は同じです。マネジメント専任が長かった方は、技術以外の越境で構いません。
- 経歴に空白期間がある場合、その理由をお尋ねすることはありません。期間の長さや「直近◯年」といった機械的な基準で判断することもしません。前後のご経験で見ます。
- 前職の守秘に関わるところは抽象化して話してもらって大丈夫です。それで不利になることはありません。

4. なぜこの形にしたのか
ひとつは、評価が面接官によってブレるのを減らしたいからです。観点を揃えずに面接をすると、相性やその日の会話の流れで結果が動きます。候補者からすれば不公平です。柱と掘り方を揃えることで、そこを抑えています。
「じゃあ最終面接はなぜ質問を固定しないのか」と思われるかもしれません。最終も観点は固定していて、進行だけ対話に寄せています。見ているのは、外販(FDE)を組織の面から任せられるか、経営と同じ言葉で組織を語れるか、そしてこの経営陣と組織をつくりたいと候補者側が思えるか。3つ目は候補者の判断なので、質問リストで進める話ではありません。あわせて、ここまでの各観点の最終チェックもします。
なお、一次で確認した能力面の評価を、最終の印象でやり直すことはしません。ただ、最終独自の観点でお見送りになることはあります。
もうひとつ。この選考自体が、入社後の働き方のサンプルになっています。柱1の「問いを立てる」は日々の1on1でやっていることそのままですし、柱2の越境はAI駆動開発と少人数スクワッドの現場で毎日起きていることです。面接で聞かれることと入社後にやることが一致していれば、入社してからのギャップは小さくなると思っています。
選考とAIの使い分けについても触れておきます。ROXXは「Zキャリア AI面接官」を提供している会社です。あのプロダクトは、候補者が多数いらっしゃる選考で一人あたりに十分な時間を使えない、という問題を解くために作りました。一方で今回のような少数・高裁量のポジションは、人が時間をかける設計にしています。何をAIに任せ、どこを人に残すか。前回の記事で書いた問いを、自社の採用にも当てはめた結果です。
5. うまくいっていないところ
前の2記事と同じように、できていないことも書きます。
評価の尺度の言語化が途中です。構造化面接がブレを減らすのは、質問を揃えるからというより尺度を揃えるからなので、ここが粗いのはまだ弱い。いまは一次の面接官がそれぞれ別に評価を書いてから突き合わせる形で、なんとか抑えています。
過去の行動を掘る手法自体にも限界があります。前回書いたとおり、横断EMという役割には前例がありません。前例のない役割を過去の再現性で測ろうとしている矛盾は自覚しています。最終の対話で補ってはいますが、十分とは言えません。
構造化面接は、想定外の魅力を拾いにくいのも弱点です。だからカジュアル面談とオファー面談はあえて構造化せず、対話に寄せています。
質問も更新し続けています。2本の柱は変えていませんが、掘り方や言い方は毎月のように変わります。この記事も、たぶん半年後には書き直すことになると思います。
「公開したら対策されるのでは」については、対策されても行動の事実を掘れば分かる、という結論にしました。むしろ事前に自分の経験を棚卸ししてきてもらえるなら、そのほうがいい面接になります。
6. さいごに
ROXXは「テクノロジーで労働市場のミスマッチを解消する」を掲げている会社です。ミスマッチの多くは、お互いが持っている情報の差から生まれます。それなのに自社の採用で情報格差を放置していたら、さすがに筋が通らない。この記事を書いた一番の理由は、たぶんそこです。
そういえば、あなたの会社の選考は「なぜその質問をするのか」を候補者に説明できる状態になっていますか。私たちも、この記事を書くまでは言語化しきれていませんでした。
選考の前にまず話を聞きたい、という方はカジュアルにお話しするところからでも大歓迎です。
一緒に時代の転換点を創っていきましょう!