はじめに
株式会社ROXXのプロダクトマネージャー、松野広志です。様々な立場の方が「ロードマップ」と口にしますが、「あれ?この人と自分のイメージするロードマップは違う気がする」「正式なロードマップってあるの?」と不安になったことはありませんか。私は「有名な方や企業が作るロードマップとは違う」と言われて困惑したことがあります。ネットで検索すれば、ロードマップに関する記事は豊富に出てきますし、どうやらロードマップの種類や呼び方も多岐にわたるようです。
そこで、とある書籍と公開されているプロダクトロードマップを参考に、4つのロードマップをご紹介したいと思います。「たった4つだけ?」と思われるかもしれませんが、結局のところ自社に適したロードマップの形はメンバーやステークホルダーと協議して決めていただくことが一番だと思いますので程々のご紹介にさせていただきました。
この記事を読んでいただいた方の、自社でロードマップを作成する目的を考え、組織(チーム)に適した形のロードマップを作成する際の参考になれば幸いです。
プロダクトロードマップとは
※ この内容は他の書籍やブログでも取り上げられていますので、スキップしていただいても結構です。
プロダクトロードマップとは、長期の時間軸でプロダクトビジョンと方向性を表現したプロダクト戦略の要約であり、ステークホルダーにプロダクト開発における「なぜ(Why)」と「何を(What)」を伝えるものです。そのため、市場のダイナミクス(生産者と消費者の価格と行動に影響を与える力)に沿って作成されることが求められます。
プロダクトロードマップを活用する効果
プロダクトロードマップは、ステークホルダー(顧客を含む)に対して短期・長期の目標を伝えるためのツールです。これを活用することで、プロダクトチームは重要なマイルストーンに集中し、将来の目標における不確実性を減らすことができます。また、チーム全員が焦点を当てるべき事柄を把握することができるため、広報やマーケティングチームは新情報の発信計画を立てることができ、セールスチームはプロダクトイメージを確認できます。さらに、CSやサポートチームはリリースのタイミングに合わせたサポート策を立案することができます。
プロダクトロードマップの構成要素
プロダクトロードマップに必要な情報には、以下の要素が必要です。
・プロダクトビジョン
・プロダクト戦略
・目標又は構想
・開発するプロダクト(機能)概要と開発タイミング
・各プロダクトや機能の背景にある価値
・機能の優先順位
ロードマップの種類と活用
次に、4種類のロードマップを見てみたいと思います。
1.ポートフォリオ型ロードマップ
このロードマップは、組織やプロダクト群に複数のプロダクトが存在する場合に、各プロダクトの戦略、タイムライン、イニシアチブを定義するために使用されます。これにより、事業責任者やプロダクトマネージャー同士が複数のプロダクト間でのコラボレーションを容易に行うことができます。また、大規模なプロジェクトの概要スケジュールと類似していると考えられます。参考までに、マネーフォワード社とLayerX社のロードマップへのリンクを以下に掲載します。
2.目標と指標型ロードマップ
このロードマップは、特定のプロダクトの戦略目標と指標をステークホルダーに示すために使用されます。目標は高いレベルのマイルストーンであり、指標はその目標を達成するために必要な詳細な活動のリストを表現します。このロードマップは、共通の目標を設定するために単一または複数のプロダクトラインに適用することができます。
見た目が似ているものの、アウトカムロードマップ(OUTCOME BASED ROADMAPS)という別のタイプのロードマップが存在します。このロードマップは、アウトカム(成果)を重視して表現される点が特徴です。目標と成果の表現方法の違いにより、ステークホルダーの意識も異なるでしょう。
適切に組み合わせて使用するのも良いと思います。例えば、機能改修やチューニングに関する改修には目標を設定し、ユーザーの体験に変化をもたらすような新機能開発については成果を表現するといったイメージです。
3.リリース型ロードマップ
リリース型ロードマップは、プロダクトのリリース計画に使用されます。このロードマップでは、アルファリリース(MVP - Minimum Viable Product)、ベータ版リリース(ベータ版顧客向け)、最終的な市場/顧客向けリリースなど、各リリースで提供される機能やアイデアをステークホルダーと共有するための計画が立てられます。また、機能やそれらの実施予定のタイムラインを追跡し、エンジニアリングのリソースを調整する上でも役立ちます。
4.ステータス型ロードマップ
ステータス指向のロードマップでは、プロジェクトを「現在」「次」「将来」の3つのフェーズに分けて表現します。このロードマップは、プロダクト開発の進捗状況を容易に把握できる利点があります。一般に、外部公開を目的として作成されることが多く、検索で容易に見つけることができるのがこのタイプのロードマップです。
5.その他のロードマップ
ロードマップは、Adobeやwhatfixなどの解説で述べられているように、まだまだ多くの種類が存在します。興味のある方はぜひ調べてみてください。
また、マイクロソフト365のロードマップを、どのような対象者を想定して作成されているのかを考えながら参照してみるのも面白いと思います。
ロードマップの作り方
誰とどのように作るか
ロードマップは、主要なステークホルダー全体に影響するものであるため、ステークホルダーと協調して作成することが求められます。そのために、プロダクトマネージャーは、ステークホルダーの間を何度も往復して調整を図ることに努めます。創業間もないスタートアップでなければ、こういった行動はどの会社でも共通だと思います。
以下、ロードマップの作成例として参考にしてください。
1.経営陣、事業責任者
経営陣、事業責任者レベルの方と、会社の経営方針や事業戦略を元に、ハイレベルで非公開な内容のプロダクトに関するディスカッションをおこないます。
その際の会話で役に立つGROWモデルをご紹介します。(詳細は割愛)
そして、経営陣、事業責任者との対話を元に、ざっくりとした四半期ごとのロードマップを作成します。ここから非公開情報を削ぎ落とせば、外部に公開する「ステータス型ロードマップ」を作成することができるでしょう。
2.開発、セールス、CSなどの関係者
経営陣や事業責任者と事業方針についての確認が取れ、ざっくりとした絵が描けたら、具体的な戦略とロードマップのたたきを作成し、他のステークホルダーとの対話を重ねます。関係者にcore→why→what→howの流れを説明し、フィードバックを得ます。対話から細かい施策や機能について具体化し、開発の見込みを織り込みます。完成したロードマップは再度、経営陣、事業責任者にレビューをおこない承認を得ます。
ここからPRDを作成し、開発のチケットを作成しバックログに積む過程で「リリース型ロードマップ」を作成することができるでしょう。
最後に
プロダクトロードマップの作成は、多くの関係者との対話と調整が必要であり、事業やプロダクトの将来を描く重要な仕事です。
もし、ロードマップを描くチャンスが訪れた際には、思い切って関係者に話を聞いてまわり、自分が考えられる最善のロードマップを描いてみてください。
綺麗なロードマップを描けなくても、ないより全然マシです。ロードマップに対して、周囲から「あれが抜けている」「あれを実現したい」「こんなことはできない」「誰が決めた」「競合はこうだ」とステークホルダーと議論になり、その対話こそが組織とプロダクトの前進に役立つからです。
ロードマップを描いた人には、豊富な情報と様々な立場のステークホルダーの考えを知ることができ、経験とスキルにつながりますので、ぜひ挑戦してみてください。
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