はじめに
株式会社ROXXのプロダクトマネージャー、松野広志です。
プロダクトマネージャーにおすすめのフレームワークを「新規事業開発編」「機能開発編」「分析編」の3つに分けて記事にしたいと思います。
当記事では、その中の機能開発時に役立つフレームワーク3つをご紹介します。
機能開発時に役立つフレームワーク
1.Hooked Framework(フックフレームワーク)
2.HEART Framework(ハートフレームワーク)
3.RICE Framework(ライスフレームワーク)
※ 各フレームワークを詳細に説明する記事ではありません。
1.Hooked Framework(フックフレームワーク)
出典
Nir Eyalの著書『Hooked』で紹介されたHookedというフレームワークは、ユーザーの問題を解決するためのソリューションを提供し、そこからソリューションの利用を習慣化するために頻繁にアクセス(利用)することの重要性について述べられています。
フレームワークの使い方
顧客やユーザーが抱える課題を特定し、そのタイミングでプロダクト側が提供する接点を表現し、それによって生じる顧客の行動変容と購入までのプロセスを迅速に整理し、ディスカッションするのに役立ちます。
例
BtoBの従業員エンゲージメントを測るシステムを例に考えてみたいと思います。
Trigger(きっかけ)
内部要因:チームリーダーはメンバーのパフォーマンス管理で悩む
外的要因:メンバーの毎日のマイクロサーベイの結果通知が届く
Action(行動)
チームリーダーがプロダクトの画面を開き、メンバーのエンゲージメントの傾向を把握する。不調傾向のメンバーを把握し勤務状況と周囲の関係性を確認する。
Variable Reward(報酬の変動)
メンタル面、フィジカル面のフォローアップをおこなうことで事態の悪化を未然に防ぐことができる。余裕を持って周囲に相談がおこなえる。
Investmnent(投資)
月払い、年払いの定期購入の場合、クレジットカード情報を入力する。
ユーザー数課金の場合は従業員が増えるとアップセルにつながる。
実際には簡単に利用が促進されることはありませんが、「共通のフレームワークで議論しやすいこと」「挑戦が失敗した際には、どこが上手くいかなかったを議論しやすくなる」という効果がありますので、使ってみてはいかがでしょうか。
2.HEART Framework(ハートフレームワーク)
出典
作成者:Kerry Rodden, Hilary Hutchinson, Xin Fu
https://library.gv.com/how-to-choose-the-right-ux-metrics-for-your-product-5f46359ab5be
フレームワークの使い方
ハートフレームワークは、主要なUXパラメータ(Happiness、Engagement、Adoption、Retention、Task Success)に対するゴール、シグナル、メトリクスのマトリックスで構成されています。フレームワークを通じてプロダクトを整理することで、UXメトリクスを理解し、それに応じて機能のイテレーションの調整を検討しやすくなります。
例
Happiness(幸福度)
Goals:ユーザーが、プラットフォームが役に立ち、使いやすいと感じる
Signals:評価とレビューを残す
Metrics:ネットプロモータースコア / CSATスコア
Engagement(約束、契約)
Goals:ユーザーは機能を気に入り、使い続けたいと思う
Signals:プラットフォームで過ごす時間が長くなる
Metrics:平均セッション時間/平均セッション頻度/購読者数
Adoption(採択)
Goals:新規ユーザーがプロダクトや新機能に価値を見出す
Signals:機能の使用状況
Metrics:コンテンツ視聴率/機能利用率
Retention(保持)
Goals:プラットフォームを継続利用する
Signals:プラットフォームでの活動を継続/リピート購入
Metrics:解約率/契約更新率
Task Success(タスクの成功)
Goals:特定のプランに申し込む
Signals:プランの検索数/プランに費やした時間/タスク完了頻度
Metrics:月額利用料/完了率
3.RICE Framework(ライスフレームワーク)
出典
Intercom社が自社の機能開発の優先順位を決めるために開発したものです。
https://www.intercom. com/blog/rice-simple-prioritization-for-product-managers/
フレームワークの使い方
RICE フレームワークは、開発予定の機能の「Reach(影響範囲)」「Impact(影響力)」「Confidence(自信)」「Effort(労力)」のスコアを設定し、「(Reach x Impact x Confidence ) / Effort」という計算式で RICEスコアを算出し、そのスコアが大きいものを優先的に開発するというものです。
例
Reach:影響範囲
顧客数、四半期、トランザクション数/月
Impact:影響力
択一式にする
3=特大のインパクト
2 = 高いインパクト
1 = 中程度のインパクト
0.5 = 低いインパクト
0.25 = 最小限のインパクト
Confidence:自信
以下のような%スコアを使用します。
100%=高い信頼性
80% = 中程度の信頼性
50%=低信頼度
Effort:開発工数
その取り組みは、製品、デザインからどれくらいの時間がかかるか
1ヶ月あたりの人数で測る(1人のメンバーが1ヶ月にどれだけの仕事をこなせるか)
上記は各項目の数値設定の一例ですが、自社のプロダクトに対する最適な設定を検討していただけたらと思います。例えば、私は「Reachの影響範囲をなくし、Impactを金額(売上、費用)で設定してみる」ということを実施してみたところ、結果は悪くありませんでした。それは金額を見積る際にReachもConfidenceも併せて考えることができためです。Confidenceも適当に気持ちで設定するのではなく、細かなスコア設定ができると良いと思います。例えば「100%=MVPで好感触を得ている、検証結果を数値で取得できている。」などです。
補足
RICEスコアが同点となる機能開発の優先度を比較してみたいと思います。
①インパクトが低く、開発が簡単な機能:
Reach(100)Impact(1)Confidence(100)Effort(1日)=RICE(10,000)
②インパクトが高く、開発が複雑な機能:
Reach(100)Impact(100)Confidence(100)Effort(100日)=RICE(10,000)
上記のように、RICEスコアが10,000の機能開発のどちらを優先すべきかと考える場合、私は①→②の順番で実施します。
注目すべきはEffortです。1日後に1のImpactの機能を顧客に提供することができます。②の機能がリリースするまでに100日かかるわけですから、それまでの100日 x インパクト1の価値を顧客は享受することができます。
②→①の順序でリリースすると、100日間は何も提供できず、100日後と101日後にインパクト101の価値を提供することができます。
その後の価値提供の大きさは同じですが、①→②の方が顧客に早く多くの価値を届けることができると言えます。
実際には、事業戦略や諸条件、ステークホルダーの思い、開発体制の問題も関係してくるため優先順位はスコア通りに決まり切らないと思いますが、スコアを算出する過程でプロダクトマネージャーの顧客や業務、既存機能の理解度が試され、自身の思い込みを排除する効果があるため非常に有効なフレームワークだと思います。
最後に
機能開発時に役立つフレームワークのご紹介と活用例について書かせていただきました。当記事が、これからプロダクトマネジメントをおこなう方のお役立てたらと幸いです。
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