ダンスレッスンから学ぶアジャイル開発

この記事は個人ブログと同じ内容です

ダンスレッスンから学ぶアジャイル開発

はじめに

みなさん、こんにちは株式会社ROXXでスクラムマスターをやっているぐっきーです。

さて、昨今アジャイル開発を採用する企業やプロジェクトは着実に増えてきています。しかし、アジャイル開発を実践するためには、その思想やプロセスを理解し、適切に取り入れる必要があります。そこで、このブログでは、アジャイル開発を「ダンスレッスン」に適用し、ダンスレッスンから学ぶアジャイル開発として実践した事例をご紹介します。ダンスレッスンとアジャイル開発には、実は意外な共通点があります(?)本文を読んで、その共通点を理解し、アジャイル開発の実践に役立てていただけると嬉しいです。

事例

以下は実際に私たち家族が、アジャイルマインドセットを持ってダンスレッスンをやり遂げたお話です。

自主性に任せた走り出し、向き直り

今年小学生にあがる6歳の長女がチアダンススクールの倍率2倍以上の選抜オーディションを受けることになった。 選抜オーディションでは1ヶ月前に課題曲を渡される。 普段スクールには趣味程度で通わせていたが、娘にとってははじめて他人と競争する場だったので成功体験を得られるように頑張ってみようかと家族で話した。

妻と私は娘が自分で考えて上達できるようになれるようにサポートするというコンセプトを決めた。 (個人的にはアジャイルのプラクティスを使って伴走できるのでは?とわくわくした)

そこで、まずはオーディションに向けた挑戦の第一歩として大きめの鏡を購入。PCで課題曲のふりつけ動画を再生しながら自分で練習できる環境を構築した。 ここではlinterのような素早いフィードバックで検査・適応が可能な状態を再現したかった。

自宅での練習では妻が娘と一緒に踊ってくれたりしつつ、気づいたら折返し地点の2週間が過ぎていた。 この時点で娘は曲全体のふりつけの流れはなんとなくわかった程度であり、タイミングや振りの間違っている箇所がしばしば目立つ状態。 完成度としてはよくみて30%程度であり、お手本の動画を見ずには課題曲にあわせてふりつけをなぞることも難しい状態だった。 ここで1度ふりかえり。 鏡に写った姿を見て素早いフィードバックを得ること自体には価値があったが、練習の頻度は本人の気が向いたときに任せていたため練習回数が足りていなかったと仮説を立てた。

質の高い練習をより多く実施する必要があるが、今のペースでは残り2週間で完成度30%。間に合いそうになかったためプロセスを整理することにした。

Mission, リリース計画の設定、プロセスの整理

さて、まずは計測から始める。 本人とふりつけ動画どちらも写るようにスマホで動画を取り、本人と確認。 全体的にテンポがずれていること、間違いがある箇所をチーム(父、母、娘)の共通認識とした。

期間内に完成度100%の状態(ふりつけそっくりに踊れている状態)を目指すためには練習の回数と質を上げる必要があると考えた。 しかし押しつける訳にはいかない。それでは本人がやらされている状態になり、チアリーダーとしてお客さんにダンスを通していきいきを届けることはできない。

そこでチームとしてのMissionの設定を行った。 「オーディションに合格する」 現状はこれが目標であっているか確認。 達成できたら選抜クラスとして大きな舞台で演技することができる。 ただし達成するためには今までの進め方を一新する必要がある。 すべて説明した上で改めて本人からやりたいという言葉を聞いた。

さて、次は計画を見直す。 残り2週間で完成度100%に到達。可能であれば完全に自分のものにした状態で磨きをかけた状態となりたい。

そこで最初の1週間で100%の状態を目指し、残り1週間で磨きをかけるという計画をたてた。

そこでまずはダンスを3構成にわけ、練習の度に1つずつ100%に近づけていくこととした。 これでリリースまでに必要な大まかな道筋(リリース計画)ができた。

ホワイトボードにカラムを書き、これから3回の練習にわけてそれぞれのカラム毎に洗い出した問題点(スプリントバックログアイテム:SBI)を起票し潰していく運用を説明した。(カンバン、ただしフォーマットはオリジナルのため注意)

スプリントの運用

そして初日の練習。 今回のゴールは構成1で100%を目指すことであり、これができれば全体のリズムをつかむことができる旨をチームに説明。(スプリントゴール) 改めて動画を撮影、お手本と比較しSBIを洗い出した。 それぞれ「くるくるピタッ!」などと顧客の価値?(ここでは娘が理解できることとした)から説明した一言で表現できる見出し(ストーリー)をつけ、達成難易度と価値の大きさ(ここが決まると全体が締まるなど)を見積もり、優先順に並べ替え優先度の最も高いものから着手した。その際、横でYoutubeをみようとしていた次女(妹)が現れたが、私はスクラムマスターとしてダンスの練習をママと一緒にやってごらん?と見事次女の興味を反らし、スプリントゴール達成への障害を排除した。 さて、初日の練習完了時点でチームでふりかえりを行い、スプリントゴールの達成100%の状態は実現が難しそうだが、比較動画の撮影、検査、適応を繰り返しSBIを潰していくことで70%は実現できている状態となった。ここでは100%ではないが、全体のリズムをつかむことができたことをチームメンバーで確認できたため、一時的に目標達成とした。(スコープの調整) しかし、まだここではスプリントは終わっていない。残心のこころが大切である。 翌日の練習開始直前時点がスプリント1の終了であるため、翌日保育園にいっている間も復習をしておくことを宿題とした。 そして夕方、スプリント1の終了前に再度録画をして現状確認。(スプリントレビュー) 70%の状態を満たしていることを再確認し、スプリント2では計画通り構成2に着手し、構成1の残り30%は優先度を下げることとした。

リリース、プロジェクトふりかえり

そんなこんなで残りの2週間も過ぎ、オーディション当日を迎えた。 当日は緊張してしまう子もいる中、娘自信が頻繁に自分の動きが正しいことを確認してきたこともあり(父の思い込み)自信満々、笑顔いっぱいで観客(その中には私と妻も)に存分にいきいきを届けるダンスができていたのであった。 肝心な課題のダンスについても低く見積もって90%程度のクオリティには調整できていたと思う。

そこから翌日。 待望のオーディション結果が届いた。 「合格」 残念ながら私がいないタイミングで妻と娘は通知を開封したのだが、妻曰く娘自信も思わず涙が溢れていたとのことだった。 そんな話を仕事中に聞いた私もオンラインMTGを繋ぎながら涙ちょちょ切れていたのであった。

最期に、せっかく初めての大きな成功体験を経た娘とふりかえりを行った。

以下にそのままのやりとりを示します。


  • 父:オーディションに合格するためにやったことのなかでよかったことは?
  • 娘:努力して頑張ったこと

  • 父:どんなことを頑張ったの?やってよかったことを全部教えて

  • 娘:まわるところ
  • 父:どうしてそこを直そうと思ったの?
  • 娘:ひとりだけうまくできなかった。それだと落ちる。だからまわるところを直した。

  • 父:どういうやり方で練習したの?

  • 娘:ぱぱにしたがってた
  • 父:じぶんで考えて直したところは?
  • 娘:じぶんでちゃんとできてるかを見てもらった。ぱぱたちによかった、わるかったを聞いた。

  • 父:じゃあもう少しこうしたいなぁと思ったことは?

  • 娘:足があがらなかった。笑顔ができなかった。
  • 父:じゃあよくなるためになにをしたらいい?
  • 娘:毎日の柔軟

  • 父:さいごにスターズ(選抜クラス)にうかった気持ちは?

  • 娘:うれしかった。スターズの練習毎日やってよかった。スターズにうかったら帰りの車で嬉しくて泣いちゃった。ばぁば、あーちゃん(祖母)にすぐ報告した。「おめでとう」っていってもらったことが嬉しかった。

いやぁなんとも感慨深い。 立派になったもんだと干渉しながら両親としての当初のコンセプトについても振り返ってみる。 「娘が自分で考えて上達できるようになる」 あれ、結局パパ達だいぶ干渉してた!? 1度の経験だけで物事が変わることはなさそうです。継続して何度も経験していくことが自立への道のりなのかもしれないですね。

さいごに

アジャイルなマインドや提唱されているプラクティスをダンスレッスンに活用した事例いかがでしたでしょうか? 仕事から外れた様々な場面にアジャイルを持ち込むことでカタを適用する思考の柔軟性があがり理解を深めることができるのではないでしょうか。 みなさんもぜひプライベートアジャイルをお試しください!